作曲工房定期便 2014-03-30(日)
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>今朝の最低気温12.8度(06:55;さいたま市観測点)、雨。
>雨の日曜日。
>雑草ガーデンの桜は早くも散り始めました。このはかなさが桜の魅力のひとつなのかも知れません。
>今日の定期便では「過去の出来事」の下の文章がお薦めです。時間がない方はそれだけでもどうぞ。
>地震情報
>空間放射線量
深夜2時過ぎころから日の出頃まで、わずかながら空間線量の変動がありました。関東周辺に限って時系列で見ると神奈川→東京→千葉→静岡というような順序になるので、福島由来ではない要因によるものかも知れません。
>作曲工房周辺の大気汚染状況
午前11時の戸田・蕨局のPM2.5の濃度は8μg/m3と低い値です。
>気象情報
今日は雨。明日は回復する予報です。
日本域における昨日の最高・日最高気温は27.5度、最低・日最低気温はマイナス4.9度でした。観測点については下のリンクでどうぞ。
>観測史上1位の値 更新状況(閲覧可能なのは今日だけです)
3月の最高・日最高気温、最高・日最低気温が28日に引き続き多くの観測点で更新されています。
>今日のFM番組
今朝8時5分からのNHK-AM第1の「音楽の泉」(皆川達夫さん解説)はリヒャルト・シュトラウスの「交響詩 “ドン・キホーテ”」でした。
私は自分自身のタイプを風車に向かって突撃してしまう「ドン・キホーテ型」であると分析しているので、決して好きな曲というわけではないのに、ついついラジオのチューニングダイヤルを合わせてしまいます。リヒャルト・シュトラウスのオーケストレーション、特に弦の扱いは職人芸で、彼から学ぶべき技術は数多くあります。やはり独特な弦の扱いをするプロコフィエフの弦と聴き比べれば、特徴の違いが浮き彫りになることでしょう。
午前9時からの名演奏ライブラリーは「ザ・テノール! マリオ・デル・モナコ」。終わりの30分だけ聴けました。
午後2時からの「きらクラ!」ではオネゲルの「交響曲第4番 “バーセルの喜び”」第1楽章やフランセの「ファゴットとオーケストラのためのディヴェルティメント」から第1、2、4楽章が放送されます。作曲者にとって重要な作品であるものの、テレビ・ラジオなどのメディアで聴くチャンスの少ない曲です。
午後7時20分「ブラヴォー!オーケストラ」は、園田隆一郎指揮 / 東フィル 第838回 オーチャード定期演奏会。ロッシーニ「歌劇 “セミラーミデ” 序曲」、ストラヴィンスキー「組曲 “プルチネルラ”」。終盤には別の演奏会(指揮:尾高忠明)からウィリアム・ウォルトンがジョージ5世(記憶違いだったらごめんなさい)の戴冠式のために作曲した「王冠」、ヴォーン=ウィリアムズの「グリーン・スリーヴスによる幻想曲」。
「プルチネルラ」はペルゴレージ(26歳で没した天才型作曲家。古典派様式を先取りした前古典派)ほかのメロディーを残したまま、和声構造を入れ替えたストラヴィンスキーの意欲作です。私は3大バレエ以後の重要な作品のひとつであると考えています。ぜひ、一音たりとも聴き逃さない覚悟で聴きこんでみてください(特に作曲を志すみなさん)。
午後8時20分からのリサイタル・ノヴァは、番組の1年を振り返ります。
>3月30日の過去のできごと
1510年 スペインの作曲家でオルガニストのアントニオ・デ・カベソン誕生。
1746年 スペインの画家、フランシスコ・デ・ゴヤ誕生。
1796年 正十七角形が定規とコンパスで作図可能なことをカール・フリードリヒ・ガウスが発見。
1879年 天体用カメラであるシュミット・カメラ(シュミット望遠鏡)を開発したエストニア生まれの光学技術者ベルンハルト・シュミット誕生。
1844年 フランスの詩人、ポール・ヴェルレーヌ誕生。
1853年 オランダ生まれの画家、フィンセント・ファン・ゴッホ誕生。
1867年 アメリカがロシアからアラスカを購入(720万ドル;1エーカーあたり2セントという安さ)。当時は、それを実行したスワードの名前をとって「スワードの愚行」と言われたそうでが、現在の視点に立てば大正解です。もし、自分が本当に正しい判断をしていると確信できるならば、他人の批判こそが的外れであることが分かります。しかし、多くの場合、周囲の人々がそれが正しかったのか誤りだったのかを判断するのは結果がでてからです。
1925年 人智学の創始者であるルドルフ・シュタイナー没。
1961年 245個の星団からなる「メロッテ・カタログ」を作成したイギリスの天文学者、フィリベール・ジャック・メロッテ没。かみのけ座のMel-111は双眼鏡で観ると、とても美しい星団です。
1963年 ロシアの指揮者で、ラフマニノフの破棄された「交響曲第1番のスコア」の再構成に成功したアレクサンドル・ガウク没。1960-1934までレニングラード・フィルの首席指揮者。ショスタコーヴィチの「交響曲第3番“メーデー”」を初演。
1966年 ハンガリー出身のヴァイオリニスト(女性)で、バルトークの2曲のヴァイオリン・ソナタを初演(ピアノはバルトーク自身)したイェリー・ダラーニ没。
1966年 アメリカで人気の高い画家・イラストレーターのマックスフィールド・パリッシュ没。
>毎日、過去の出来事を記していますが、ここには多くのヒントが隠されています。
スペインの作曲家、カベソン(Antonio de Cabezón 1510-1566)のオルガンやチェンバロ作品には優れた作品が数多くあります。私が若い頃には音源の入手が困難でしたが、今ではToutubeなどですぐに聴くことができます。スペインは水平トランペット管を備えた独自のオルガンを開発して、ある意味、時代の最先端を行く国でもありました(日本のパイプオルガンにも水平トランペット管を装備したものが少なからずあります。カベソン以後にはカバニリェス(J.Cabanilles 1644-1712)らが優れたオルガン音楽を書いており、ぜひとも聴いていただきたい作品群です。
ゴヤもスペインの画家です。当時のスペインは無敵艦隊を擁し、世界の覇権を目論む大国でした。ゴヤ、ベラスケス、エル・グレコらについて知ることも、あなたの芸術観に影響を与えるかも知れません。彼らの伝統は、ずっと後のガウディ、ダリ、ピカソ、ミロらに受け継がれていきます。
フリードリヒ・ガウスが、この正17角形の作図に成功したのは18歳の時のことです。数学嫌いなかたもいらっしゃることでしょうが、数学史は芸術史に勝るとも劣らぬエキサイティングな戦場です。そもそも、学校数学では「人類は数学を全て解き明かしている」と勘違いさせてしまうような数学観でスタートしますが、数学は数多くの数学者たちの天才的な閃きと執念で開拓されてきた分野です。物理学と相性が良いので数学は科学の一分野として捉えられていますが、数学は実用を離れた分野にも踏み込んでいて、やはり哲学なのだと感じさせます。試しに「無理数」とはどういうものなのか調べてみてはいかがでしょうか。永遠に続く数字の列が意味するものが見えてくるかも知れません(偉そうに書いている私は、袋小路にハマってしまっていますが)。
ポール・ヴェルレーヌの誕生も今日です。ヴェルレーヌ、マラルメ、ランボーらの象徴派詩人たちは、それ以前の詩、例えばソネットなどとは全くことなるものでした。ドビュッシーは彼ら、および印象派の画家たちとの交流の中から新しい発想を得たと言われています。ヴェルレーヌの評伝は衝撃的で、特にランボーとの関わりや、その破滅的な生涯は人生そのものが詩であったことを思わせます。
ゴッホはとても有名ですが、彼を理解することは困難を極めます。最初期、10歳の頃の素描に天性の才能を見ることができますが、農民たちを描いた暗い色調の初期作品では、子どもの頃の才能を捨て去ったかのような無骨な絵に変わります。そしてアルル時代の明るく、光に満ちた作品群は別人のようです。その後、彼は別人にはなりませんが、作風は変化し続け、晩年は不安がそのまま画面に現れたような作品になっていきます。その変化は極めて短期間のうちに起こっており、他の画家なら10年かかるところを数年でやってしまったという感じなのです。単に作風を変えたというだけではなく、ゴッホ自身が深化していったのです。その変化は、ネット上の画像や複製画では分かりにくいところがあります。気合が必要ですが。丹念にゴッホ作品の来日展覧会に出かけて鑑賞経験を続けていくと、やはりあなたの芸術観に大きな影響を与えることになるかも知れません。
・・・と、このようにひとつひとつの事項が、私達のものの見方に変化をもたらすかもしれないものを秘めている可能性があります。ぜひ、ご活用ください。
>この定期便は、前日の「野村茎一作曲工房日記」の続きとして書かれています。定期便だけお読みの方は連続写真や記事が飛び飛びになる可能性があります。よろしかったら、以下のリンクもどうぞ。